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醍醐千里の詩とエッセイ

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女神の星



女神の星



          醍醐千里




女神はそこに立っていました。

まっすぐ前を向いていました。

何があっても揺れることなく、りんと顔を上げていました。




私はいつも揺れていました。

まわり道もたくさんしました。

しなければよかったという思いと

言わなければよかったという思いに挟まれて

時々ひとりで泣いていました。




女神は私のまわり道を知っていました。

私が何度まわり道をしても

女神は揺れずに前を向いていました。


     

そしてその手で、私の後悔を光でくるみ、
     
希望の星に変えていました。



     
どうしていつも、いつのまにか、悲しみは消え、

あたたかい気持ちが戻ってくるのか、

私は不思議に思っていました。




女神の星がこの道を照らしていることに

私は全然気づかなかったのです。




ある日、私の心に激しい嵐が吹き荒れました。

私はただただ大粒の雨に濡れるにまかせ、
 
先に進むことをあきらめていました。

もう二度と雨はやまない、そう思っていました。




そのとき、明かりが見えました。

少し先に人影が映ります。

その人もやはり雨に濡れ、

私と同じように髪も服も濡れていました。




けれどその目はしっかり開かれ、

ピンとのばしたひじ、その手の先にはカンテラが灯っています。




カンテラの明かりは、激しい風にも揺れず、

道の先を照らしています。




こちらへ




その人は、もう一方の手を私に差しのべました。




今日の嵐は激しく、この道は険しい。

今は手をつないでいきましょう。




私はその人の手をとりました。




その人の手のひらはどこか懐かしいやわらかさ。




あなたは誰。




私は女神。




どこから来たの。




その胸の中から。




女神はここにいたのです。

この胸に立っていたのです。

   


どんな嵐にも揺れることなく、女神はここで前を向いていました。

美しいその手でため息を星に変え、私を朝へと導いていました。




私の中にこそ、女神は在り、

暗闇の中でこそ、光を増していたのです。




私は女神の瞳をのぞきました。

そこには星が宿っていました。




女神の星。




その星は

私の瞳そのものでもありました。
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by chisatodaigo | 2013-06-15 10:58 | words
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